不安だから、実際の裁判の流れとか知りたいです。
こんにちは、キベリンブログです。
敷金トラブルには訴訟が有効ですが、初めてだとやっぱり不安ですよね。
今回は、「敷金返還訴訟の裁判をひとりでやってみた話」を、紹介します。
【本記事の内容】
① 敷金返還請求の裁判を起こした背景とポイント【クリーニング特約】
② 敷金返還訴訟での簡易裁判所への出廷と出席者【法廷を解説】
③ ひとりで起こした裁判(口頭弁論)の流れと会話を公開【経験談】
④ まとめ:裁判すれば返ってくる敷金は増えるので、やってみる価値あり
悪質な管理会社を相手取り、弁護士なし(本人訴訟)で敷金返還を請求しました。
不当な退去費用の請求で悩んでいる人に向けて、敷金を全額取り返した経験を語っていきます。
※裁判手続きのやり方については、「【弁護士不要】少額訴訟で敷金を取り戻す!やり方解説【1日で終了】」をご覧ください。
① 敷金返還請求の裁判を起こした背景とポイント【クリーニング特約】
最初に結果を書いておきますが、裁判で敷金を全額取り返しました。
その裁判について、ひとりで裁判を起こすに至った背景と、争点となったポイントを説明しておきます。
敷金返還請求の裁判を起こすまでの背景
・6畳ワンルームの部屋を退去後、クリーニング代「49,000円」を請求してきた
・敷金は「35,000円」だったため、1円も返還されない
・退去時に清掃は徹底して行い、賃借人としての原状回復の義務は果たしている
・契約書の「クリーニング費用は借主負担」という記載は、特約が有効となる要件を満たしていない
・被告としたのは管理会社(家賃の振込先)で、以前から対応は不誠実だった
訴訟の背景を簡単にまとめると、上記のとおりです。
返還されない敷金の金額だけを見れば、そこまで大きな額ではありません。
裁判を起こす決め手になったのは、「管理会社の不誠実な対応」でした。
詳しい内容は長くなるので省略しますが、入居中からも管理会社の対応の悪さに悩まされていたためです。
一般的に部屋を借りる人は、退去時のクリーニング代を負担する必要があるのか分かりません。
知らないのをいいことに、そこを狙った詐欺のようなやり方も許せなかったですね。
特約の有効性に欠けていることから「クリーニング費用の請求は不当」と判断し、裁判で敷金の全額返還を要求しました。
裁判の争点となったポイント
・契約書の特約は「退去のクリーニング費用は借主負担とする」という内容のみで、具体的な記載は一切なし
・原告は「過去の判例から特約の要件を満たしていないため、クリーニング費用の請求は不当」と主張
・被告の反論は「契約書に書いてある」の一点張りで、原状回復が行われていない証拠は一切出せず
・入居期間は、1年半ほどと短かった
裁判でポイントとなったところは、上記の内容です。
クリーニング費用の具体的な金額や範囲を明確にしていない、典型的なクリーニング特約の記載内容でした。
それ以外では、「入居期間が1年半と短かったこと」がプラスに働きましたね。
② 敷金返還訴訟での簡易裁判所への出廷と出席者【法廷を解説】
敷金返還請求の裁判当日の状況について、以下の項目ごとに説明していきますね。
【裁判(口頭弁論)の状況】
・簡易裁判所への出廷
・裁判の出席者と服装
・法廷の座席と状況
簡易裁判所への出廷
敷金返還請求の訴訟の手続きから1か月半後、裁判の口頭弁論の日がやってきました。
5分前に簡易裁判所の受付へ行くと、書記官が法廷まで案内してくれます。
法廷には誰もおらず、出廷した証明として書記官から提示された用紙に名前を書きます。
ほどなく、裁判の出席者が法廷に入ってきました。
裁判の出席者と服装
・裁判官(50代 男性) : スーツ
・書記官(40代 女性) : ニット + ロングスカート
・司法委員(60代 男性) : スーツ
・被告(50代 男性) : シャツ + スラックス
・原告(わたし) : シャツ + チノパン
裁判の出席者は、上記の5人です。
被告側にも弁護士はいませんでした。
年齢層はわりと高めですね。
裁判のときの服装は、スーツまたはビジネスカジュアル風で、みんな落ち着いた服装でした。
派手でなければ、普段着レベルの私服で問題なさそうでしたね。
【司法委員とは】
簡易裁判所の民事訴訟では、専門知識に詳しい民間の人が司法委員として審理に参加します。
和解に向けて、裁判官に助言する人ですね。
法廷の座席と状況
上図のとおり、法廷は「ラウンドテーブル(円卓)」と傍聴席が10席ほどの小さな部屋でした。
一般的にイメージする裁判の法廷とは異なり、話しやすい雰囲気があります。
座席の配置は、裁判官の両脇に書記官と司法委員が座り、被告と原告はやや距離ができる形です。
ラウンドテーブルは大きかったので、半分くらいは空いているような状態でした。
③ ひとりで起こした裁判(口頭弁論)の流れと会話を公開【経験談】
敷金返還請求の裁判の流れを、会話の内容も混ぜながら紹介していきます。
【裁判の流れ】
1. 提出した証拠書類の原本の確認
2. 司法委員の解説と、和解の提案
3. 裁判官が、敷金の返還金額を調整
4. 判決(敷金の全額返還での和解)
1. 提出した証拠書類の原本の確認
最初に裁判官が簡単な自己紹介を済ませると、提出した証拠書類の原本を確認する作業から入りました。
証拠書類には「賃貸借契約書」や「内容証明郵便」などのコピーを提出しています。
被告にもコピーは事前に送られているので、内容は知っています。
裁判の当日は原本を持ってくるよう聞いていたので、原本を裁判官に渡して確認します。
裁判官「被告も確認しますか?」
被告「いや、いいです」
すぐに原本は返却されて、証拠書類の確認は終了です。
※証拠書類の詳細は、「【敷金返還】少額訴訟裁判の手続きで必要な書類とは」で紹介しています。
2. 司法委員の解説と、和解の提案
証拠書類の確認が終わると、裁判官から説明が始まります。
裁判官「まずは敷金トラブルに詳しい司法委員から話をしてもらいますので、私と書記官は一旦退出します」
裁判官と書記官は、すぐに法廷を退出していきました。
法廷には司法委員、被告、私の3人だけの状態です。
司法委員から、一般的な原状回復の考え方についての解説が始まります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の内容ですね。
この解説が20分くらい続いたのですが、事前に知っていた内容なので「ちょっと長いな...。」と感じてしまいました。
被告は管理会社にもかかわらず、原状回復のガイドラインを分かっていなかったようです。
ようやく解説が終わると、和解の提案に入っていきます。
司法委員「原状回復の原則をふまえた上で、被告は原告の主張を認めますか?」
被告「うーん...。でも契約書にクリーニング代は借主負担って書いてありますよね?」
司法委員「この書き方では、過去の判例からも原告に全額を負担させるのは難しいと思います。入居期間も1年半と短いですしね。それなりの額を原告に負担させるなら、原状回復が行われていない証拠が必要です。立証責任は請求する側にありますので。」
被告「証拠はありません。でも、こちらで全額を負担するのはちょっと・・・。」
司法委員「わかりました。では原告にお聞きしますが、いくらならクリーニング代を出せますか?」
わたし「退去前にも徹底的に清掃は行っており、賃借人としての原状回復の義務は果たしています。入居期間も短いですし、負担する必要のない費用は出せません」
司法委員「お互いの主張はわかりました。では裁判官を呼んできますので、ちょっとお待ちください。」
司法委員は、基本的に和解を勧めてきます。
しかし、私の口調から和解は難しいと判断したようです。
司法委員が席を立って法廷を出ようとしたとき、被告に尋ねました。
司法委員「あ、ちなみに被告はクリーニングはもう済ませたのですか?」
被告「・・・(少し沈黙して)いえ、まだです」
裁判の時点では退去から3か月以上経っていますが、被告の管理会社はクリーニングを行っていません。
やるかどうかも分からないクリーニング費用など、どこに負担する必要があるのでしょうか。
3. 裁判官が、敷金の返還金額を調整
司法委員が裁判官と書記官を連れて、法廷に戻ってきます。
裁判官「今後について説明します。原告からは少額訴訟で受け付けましたが、被告の希望で通常訴訟に移行しています。次の口頭弁論までに、主張と裏付ける証拠を郵送でやり取りすることになります。被告はクリーニング費用を原告に請求するなら、証拠を提出してください。」
被告「あの、さっきも話したのですが、証拠は出せないです」
裁判官「それは、時間があっても出せないということですか?」
被告「・・・はい、時間がムダになるだけだと思います」
被告は通常訴訟への移行を希望したのですが、あきらめたのか裁判を早く終わらせたいようです。
裁判官は黙ったまま、数秒ほど考えていました。
裁判官「原告は、ちょっと外に出てください」
私が法廷を出た後、裁判官が被告と話します。
数分後、書記官が呼びに来て法廷に戻ると、私と入れ替わりで被告が外へ出ます。
裁判官「被告は25,000円なら返還すると言ってます。どうですか?」
わたし「クリーニング費用は私が10,000円(敷金は35,000円なので)を負担するということですか?」
裁判官「まぁ、そういうことになります」
わたし「敷金は返還されるべきものであり、原状回復義務を果たした上で裁判を起こしています。受け入れられません」
裁判官「・・・わかりました、ちょっと待っててください」
裁判官は法廷を出て、外にいる被告のところへ行きました。
私を外へ出すよりも、自分が外に出て被告と話した方が早いと思ったのでしょう。
数分後、裁判官だけ法廷に戻ってきます。
裁判官「30,000円ではどうですか?」
値引き合戦が始まったようです。
裁判官も、基本的には和解を勧めてきます。
わたし「先ほども申し上げたとおり、敷金の全額35,000円でなければ受け入れられません。」
裁判官「そうですか…、わかりました」
裁判官は、小走りで再び法廷の外へ出ていきました。
1分ほどで、息を切らしながら法廷に戻ってきます。
裁判官「被告が35,000円の返還を認めました。年率5%の利息まで請求しますか?」
わたし「敷金の全額を返還してもらえるなら、利息は特に構いません」
裁判官「念のため、指定する期日までに返還されなければ、利息も支払うということで良いですか?」
わたし「はい。それと、裁判費用はどうなりますか?」
裁判官「たいした額でもないので、各自の負担でいいですか?」
わたし「(裁判費用は5,000円くらいだしな...。ま、いっか)わかりました。」
裁判官「では被告を呼んでくるので、ちょっと待っててください」
裁判官が行ったり来たりした結果、思ったよりも早く話がまとまりました。
【少額訴訟と通常訴訟の違いについて】
・少額訴訟 : 請求金額は60万円以下で、審理から判決まで1日で行う。控訴はできない。
・通常訴訟 : 請求金額や判決までの時間に制限なし。判決に不服なら控訴も可能。
特徴は上記のとおりですが、裁判の手続きにかかる費用は「少額訴訟」も「通常訴訟」も同じです。
原告が「少額訴訟」で手続きしても、「被告が通常訴訟を希望した場合」は、通常訴訟へ移行します。
通常訴訟だと長くなるイメージがありますが、審理から判決まで1日で終わることもあります。
4. 判決(敷金の全額返還での和解)
裁判官が被告を連れて法廷へ戻ってきて、裁判の出席者の5人全員が揃います。
裁判官「被告は、35,000円を期日までに原告の指定口座へ振込で返還すること。書面は追って送りますが、少額でもあるので書面の到着前に振込を済ませてしまってください。では終了します」
裁判官は判決を告げると、一目散に法廷を出ていきました。
以上の流れで、1時間ほどの裁判は終了です。
こうして無事、敷金の全額返還を勝ち取りました。
私もすぐに法廷を出て、簡易裁判所を後にします。
少額訴訟から通常訴訟に移行したものの、裁判は審理から判決まで「1日(1時間ほど)」で終わりました。
数日後には敷金の返還も確認でき、早く終われて良かったです。
④ まとめ:裁判すれば返ってくる敷金は増えるので、やってみる価値あり
本記事では、「敷金返還訴訟の裁判をひとりでやってみた話」を紹介しました。
ポイントをまとめます。
【裁判の争点となったポイント】
・契約書の特約は「退去のクリーニング費用は借主負担とする」という内容のみで、具体的な記載は一切なし
・原告は「過去の判例から特約の要件を満たしていないため、クリーニング費用の請求は不当」と主張
・被告の反論は「契約書に書いてある」の一点張りで、原状回復が行われていない証拠は一切出せず
・入居期間は、1年半ほどと短かった
【裁判の出席者と服装】
・裁判官(50代 男性) : スーツ
・書記官(40代 女性) : ニット + ロングスカート
・司法委員(60代 男性) : スーツ
・被告(50代 男性) : シャツ + スラックス
・原告(わたし) : シャツ + チノパン
【裁判の流れ】
1. 提出した証拠書類の原本の確認
2. 司法委員の解説と、和解の提案
3. 裁判官が、敷金の返還金額を調整
4. 判決(敷金の全額返還での和解)
私のケースでは、裁判で敷金の全額返還に成功しました。
不当に退去クリーニング費用を請求されて敷金が返ってこないなら、少額訴訟は有効な手段です。
敷金の全額返還は状況により難しいかもしれませんが、高い確率で返ってくる金額は増えるはずです。
裁判に必要な作業としては、以下のとおりです。
【裁判を行うのに必要な作業】
・訴訟の必要書類を準備する(訴状、証拠書類、登記簿謄本など)
・手続きで簡易裁判所に行く(平日に1時間ほど)
・裁判(口頭弁論)を行う(平日に1時間ほど)
・裁判費用は「5,000円」ほど
数万円を超えて敷金を返してもらえないなら、裁判を起こす価値はあります。
裁判というとハードルが高いように感じますが、少額訴訟は1日で終わります。
ひとりで裁判を起こせるし、そこまで堅苦しい雰囲気もありません。
経験も積めたので、今後に同じような敷金トラブルがあれば、また裁判を利用しようと思います。
泣き寝入りしなくても、裁判で取り返すことが可能です。
ぜひ検討してみてくださいね。
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