
外国人だけじゃなくて、日本人も対象なの?
こんにちは、キベリンブログです。
住民税は1年遅れの後払い方式なので、海外移住などでの出国時は要注意です。
今回は、「出国者の住民税の実態調査と、日本人も影響する支払い義務のしくみ」について紹介します。
【本記事の内容】
① 出国者の住民税、未納問題を実態調査へ【しくみと支払い義務】
② 日本人にも影響する、出国時の住民税の支払い義務【お得になる出国日】
③ まとめ:出国者の住民税の支払い義務は、海外滞在する日本人にも要注意
海外転職での海外移住を経験し、住民税のしくみも学んできました。
出国者にも発生する住民税の支払い義務のポイントを、わかりやすく語っていきます。
① 出国者の住民税、未納問題を実態調査へ【しくみと支払い義務】

① 出国者の住民税、未納問題を実態調査へ【しくみと支払い義務】
2025年7月下旬、「出国者住民税、実態調査へ 総務省、徴収漏れ対策を検討」というニュースが報道されました。
外国人が日本で働いた後に、住民税を未納のまま自国へ帰ってしまい、徴収できない事態が発生しているとのこと。
参議院選挙でも外国人問題は争点となっており、ルール改正が求められていることも背景にありそうです。
さらに住民税は、"1年半遅れの後払い方式" なので、しくみがややこしい問題があります。
ニュースでは外国人の問題として扱われていますが、実は "日本人も対象となる問題" です。
具体的にどういう問題なのか、住民税のしくみを踏まえて見ていきましょう。
住民税のしくみとは
しくみ❶ : 「前年の所得」から計算した税額(約10%)を、6月から支払う
しくみ❷ : 「1月1日時点」で、日本で住民登録されている市区町村に支払う
住民税のしくみで知っておくべきポイントは、上記の2つです。
住民税は所得税と違って、「前年の所得」から計算されます。(税額は前年所得の約10%)
つまり、"1年半遅れの後払い方式" なんですよね。(このしくみが外国人が未納のまま帰国してしまう原因にもなっています)
社会人の1年目は住民税がかからないことや、退職して無職でも高額の住民税を請求されるのは、後払い方式のしくみだからです。
住民税の支払い先はどこになるかというと、その年の「1月1日時点」で住民登録されている市区町村に払います。
年の途中で別の市区町村に引越ししても、その年の住民税は引越し前の市区町村に払い続けることになります。
住民税の支払い義務が発生する条件
条件❶ : 「前年の所得」が、45万円以上あること(給与収入では110万円以上)
条件❷ : 「1月1日時点」で、日本で住民登録されていること
住民税の支払い義務は、上記の2つの条件を満たすと発生します。
外国人でも、日本で働いて一定以上の収入があり、住民票があれば住民税の支払い義務があります。
2025年以降は税制改正があり、給与収入では住民税がかかる年収が「110万円以上」と10万円ほど引き上げられました。
いわゆる "年収100万円の壁" は、"年収110万円の壁" に変わっているということですね。
なお、2つの条件のうち、どちらかを満たしていなければ住民税の支払い義務はありません。
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出国する場合、"準確定申告" をする必要がある
住民票を抜いて(住民登録を削除する)日本を出国する場合、「準確定申告」をしなければならないルールがあります。
"準" と言っていますが、やることは確定申告と変わりません。
出国前までの所得を申告して、税金の過不足を調整します。
未納分の税金があると、この準確定申告の際に "納税管理人" の指定を求められ、出国後は代わりに税金手続きが請求されるしくみです。
外国人だけでなく、日本人も住民票を抜いて出国する場合は、住民税の扱いには要注意です。
日本人にも影響するポイントを、次のパートで深掘りしていきますね。
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② 日本人にも影響する、出国時の住民税の支払い義務【お得になる出国日】

② 日本人にも影響する、出国時の住民税の支払い義務【お得になる出国日】
ここまで、出国者の住民税の未納問題と、徴収漏れが起こる背景となる住民税のしくみを見てきました。
出国者というのは外国人だけでなく、住民票を抜いて海外へ行く日本人にも当てはまります。
海外移住(1年以上が原則)で出国するときなどは、出国後でも住民税の納税義務が発生することが多いです。
ここで納税義務のカギとなるのが、日本を出ることになる「出国日」です。
日にちの選び方によって、税金の負担額が数十万円も変わってきたりします。
具体的に出国日はどう選ぶとお得になるのか、住民税のしくみを踏まえつつ、ここで紹介しておきますね。
海外移住する "出国日" は、いつがお得になるのか?
❶ 1月2日
❷ 5月31日
❸ 12月31日
最初に、ちょっと考えてみてください。
上記の3つの日付のうち、海外移住するときの出国日は、どの日付を選ぶと住民税がお得になると思いますか?
正解は、「❸ 12月31日」が最もお得になります。
なぜそうなるのか、改めて住民税のしくみと合わせて見ていきましょう。
住民税は、前年の所得にかかる1年半遅れの後払い方式
前のパートでも紹介したとおり、住民税は "1年半遅れの後払い方式" です。
社会人2年目になると、1年目では引かれなかった住民税が引かれるので、給料の手取りが減るケースが多いです。
住民税は、「前年の所得」に対して、約10%が課税されます。
例えば、前年の所得が300万円だったら、"約30万円" も住民税を払わなければなりません。
その年の住民税の支払いは、"6月" から支払いを開始します。(これが1年 "半" 遅れになる理由ですね)
6月になると住民税の書類が送られてきて、「6月から翌年5月」を1年として、通常は「4期に分割(6月、8月、10月、1月)」して払います。
でも海外に1年以上行く予定の場合は、出国日によってまとめて住民税を払わないと面倒になるので、高額を一括払いするケースも多いです。
私も経験がありますが、まとまったお金が必要になったりするので、注意してくださいね。
1月~5月の出国でも、住民税の支払い義務がある
住民税の支払いは6月以降と紹介しましたが、「5月以前に出国する場合」でも、その年の住民税は "支払い義務" があります。
その場合は住民税の決定通知書などの書類も受け取れず、具体的な税額もわからないので、どう支払えばいいのか困りますよね。
そこで前のパートでも説明したとおり、支払いが難しい場合は「納税管理人」を選んでおく必要があります。
納税管理人は、あなたの代わりに納税の手続きをする人のことです。
管理人といっても税理士などに依頼する必要はなく、家族や友人でOKです。
海外移住前には "準確定申告" が必要で、その際に納税管理人を求められることが多いです。
1月1日時点で住民登録がなければ、住民税の支払い義務はなくなる
ここで住民税のしくみを振り返ると、「1月1日時点」で住民登録のある市区町村に支払います。
でも海外移住するときに役所で "海外転出届" を提出すると、住民登録は削除されます。(これを "住民票を抜く" と呼ぶ)
日本ではどこにも住民登録されていない状態になるので、住民票もなくなります。
住民登録のない状態で1月1日を過ぎると、たとえ前年に所得があっても、その年の住民税は支払い義務がありません。
ただし、海外転出届が提出できるのは、「原則として1年以上の予定で海外に滞在する場合」というルールがあります。
単なる旅行では認められないし、住民税逃れのために海外転出届の提出を繰り返したりするのは難しいので、注意しておきましょう。
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出国日は年の後半にするほど、住民税はお得になる
❶ 1月2日 : 1年分の住民税を支払う(日本滞在は2日間)
❷ 5月31日 : 1年分の住民税を支払う(日本滞在は5ヶ月間)
❸ 12月31日 : 1年分の住民税を支払う(日本滞在は1年間)
住民税のしくみを踏まえた上で、最初に紹介した3つの出国日をもう一度考えてみましょう。
繰り返しですが、住民税は「1月1日時点で住民登録のある市区町村に支払う」しくみです。
住民税は、いつ出国しても金額は同じで、減額されるようなことはありません。
例えば「❶ 1月2日」が出国日の場合、その年はたった2日間しか日本にいないのに、それでも1年分の住民税を6月以降に支払う義務が発生します。
つまり、「年の後半に出国するほど、住民税はお得になる」ということですね。
もし出国日をずらせるなら、年末など年を越す前に出国した方が損せずに済みますよ。
③ まとめ:出国者の住民税の支払い義務は、海外滞在する日本人にも要注意

③ まとめ:出国者の住民税の支払い義務は、海外滞在する日本人にも要注意
本記事では、「出国者の住民税の実態調査と、日本人も影響する支払い義務のしくみ」を紹介しました。
ポイントをまとめます。
【住民税のしくみとは】
しくみ❶ : 「前年の所得」から計算した税額(約10%)を、6月から支払う
しくみ❷ : 「1月1日時点」で、日本で住民登録されている市区町村に支払う
【住民税の支払い義務が発生する条件】
条件❶ : 「前年の所得」が、45万円以上あること(給与収入では110万円以上)
条件❷ : 「1月1日時点」で、日本で住民登録されていること
【日本人にも影響する、出国時の住民税の支払い義務】
・1月1日時点で住民票を抜いていれば、その年の住民税の支払い義務はなくなる
・出国する年の住民税は支払い義務があるため、まとめて高額を一括払いするケースもあり
・1月~5月の出国で住民税額が決まっていない場合でも、出国後に支払い義務が発生する(納税管理人が必要)
外国人が住民税を未納のまま帰国してしまう問題が指摘されていますが、日本人でも対象となります。
海外での長期滞在や、海外移住している人も、同様に実態調査の対象となり得ます。
徴収漏れが起こる背景には、"1年半遅れの後払い方式" という住民税のややこしいしくみが影響しています。
"前年の所得" から住民税額(所得の約10%)が決まり、"6月" から徴収開始なので、注意しておきましょう。
海外での長期滞在(1年以上)を考えているなら、「1月1日時点」で住民票を抜いていれば、その年度の住民税の支払い義務はありません。
出国日は年の後半にするほど住民税でお得になるので、日程をずらせるなら検討してみてくださいね。
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